東京電力に対する直接請求
1東京電力から送付される請求書式への記入
東京電力から定期的に送付される請求書式に必要事項を記入し,必要書類を添付して請求します。
※請求書式に列挙されている定型的な損害以外にも損害が生じている場合には,「その他の損害」欄などを適宜使用して請求します。
※請求書を郵送する場合,請求書と添付資料は必ずコピーを取って控えを残しておきましょう。
担当者と交渉する場合にお互いに資料を見ながら交渉しなければならない場合があるほか,弁護士に相談する場合もこれらのコピーがあったほうがスムーズに相談ができます。
2東京電力の担当者と交渉
和解金額の提案や追加の資料の要請などがなされますので,担当者と交渉します。
和解金額を受け入れるにあたっては,安易に判断せず専門家の意見を聞くことをお勧めします。
3合意が成立した場合は,和解書の作成
東京電力が送付してくる和解書に署名押印をして,和解書を作成します。
※現在は改善がなされているようですが,念のため,「東電と被害者との間には、本和解条項に定めるほかには債権債務はない」というような条項が入っていないか確認してください。
これを清算条項といいますが、この清算条項がある場合、後から追加請求ができなくなる危険があります。
※また,何の損害項目について、いつからいつまでの期間について合意したのかも必ず確認するようにしてください。
金額が間違っていないかも当然確認する必要があります。
4和解金の入金
指定した口座に,東京電力から賠償金が振り込まれ,支払完了となります。
和解が成立しない場合
ADR申立てか,民事訴訟の提起を検討することになります。
なお,東京電力への直接請求をすることなく,いきなりADR申立てや民事訴訟の提起をすることもできます。
直接請求のメリット・デメリット
- メリット
- 原子力損害賠償紛争審査会が作成した中間指針(下記に記載あり)の範囲内の損害であれば,速やかに支払ってもらうことが可能。
ADR申立てや民事訴訟に比較すれば費用がかからず,時間も早い。 - デメリット
- 中間指針を超える請求については基本的に応じない。
原子力損害賠償紛争解決センターに対する和解仲介申立て
原子力損害賠償紛争解決センターという公的機関に対して和解仲介申立てを行うもので,仲介委員や調査官という中立的な第三者が関与し,和解案を提示する手続になります。
参考URL http://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/1329118.htm
原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介(ADR)について、詳しくはこちらをご覧ください。
1和解仲介申立書の作成,送付
和解仲介申立書に必要事項を記入し,必要な証拠を添付して,東京にあるセンター事務所に郵送します。
ADR申立ての受付けは東京事務所のみで行っていますので,基本的に東京事務所に郵送します。
2仲介委員,調査官の選任の通知
事件を担当する仲介委員,調査官と呼ばれる第三者機関が決定され,通知されます。
3東京電力の答弁書の提出
申立書に対する東京電力の見解が記載された答弁書という書面が提出されます。
東京電力が支払を認める金額,認めない金額,それらの理由などが記載されています。
4追加の主張書面,証拠の提出
必要に応じ,仲介委員から追加の主張,証拠の提出が求められる場合があります。
5口頭審理期日の実施
ある程度主張と証拠がそろった段階で,仲介委員が被害者から直接話を聞く口頭審理期日が開かれます。
この口頭審理期日において,例えば,精神的苦痛に関する事実関係を伝えたりします。
※現在は,仲介委員らが直接福島に出向くのではなく,電話会議あるいはテレビ会議で実施されているケースが多いようです。
直接話を聞いてもらいたい場合には,福島の事務所に出頭するよう求める必要があります。
6和解案の提示,和解の成立
紛争解決センターから被害者と東京電力の双方に対し,和解案が提示されます。
双方が和解案を受け入れる場合,和解成立となります。
※双方または一方が和解案を拒否した場合,和解は成立せず,ADR手続は終了となります。
※紛争解決センターの職務は和解案の提示までになりますので,和解書の作成は当事者間で直接行われます。
和解仲介申立て(ADR)のメリット・デメリット
- メリット
- 仲介委員や調査官の関与・説得により,中間指針以上の和解案を引き出せる可能性がある。
紛争解決センターに対する手数料は不要である。
訴訟に比較すれば迅速な解決が可能(ただし現在は,申立て件数が多いため最低でも6か月程度を要します)。 - デメリット
- 東京電力が和解案を受諾しない場合,和解は成立しない(和解案を強制的に受け入れさせることはできない)。
資料や証拠を多く提出する必要がある。
仲介委員や調査官の原発被害への理解の程度によって,結論に幅が出る場合がある。
民事訴訟の提起
裁判所に訴訟を起こす手続になります。直接請求やADR申立てを行うことなくいきなり提起することも可能です。
1訴状の作成,提出
訴状を作成し,必要な資料,証拠をつけて管轄裁判所に提出します。通常は,被害者の住所地の裁判所に提起することが可能です。
※ADR申立てと異なり,裁判所に対して手数料を収める必要があります。
2口頭弁論期日の指定,出頭
訴状に形式的な不備がない場合,口頭弁論期日が指定されますので,その日に出頭する必要があります。
3期日の続行,当事者の主張立証
必要に応じて期日が何回か開かれ,その間に当事者の主張立証がなされます。
4証人尋問の実施(必要に応じて)
証人や本人から話を聞く必要がある場合に実施されます。
5判決言渡し
※場合により和解を勧告する場合もあります。
民事訴訟のメリット・デメリット
- メリット
- 中間指針などに拘束されることなく裁判所が因果関係のある損害を認定するので,主張立証次第では大きな賠償額を勝ち取れる可能性がある。
判決によって強制執行を行うことも可能。 - デメリット
- 終結までに時間がかかる(控訴,上告になった場合,数年単位の時間がかかる)。
主張立証の負担が大きい。
裁判所に対して手数料を納める必要がある。